少数非上場株式をその価値にふさわしい価格で売却するには、正確な情報をもとに、状況に応じた手順を踏んでいく必要があります。
少数非上場株式売却の手続の流れを図示すると以下のようになります。
(1)譲渡制限株式の発行会社の情報を集める
ア 収集すべき情報
・そもそも自分が株式を何株保有しているのか
・保有している株式には譲渡制限が付されているのか
・株券が発行されているのか
・会社の資産
・会社の利益
・会社の財務状況
・主な取引先や株主構成
など
イ 情報収集のための方法
・会社の登記簿謄本を法務局で取得する
・会社の定款を確認する
・株主総会に出席する
・株主名簿を確認する
・株主総会議事録を確認する
・会計帳簿を確認する
・計算書類を確認する
など
(2)買手を探す
買手の主な候補としては、
① 当該株式の発行会社
② 当該株式の発行会社の経営者
③ 当該株式の発行会社の主要株主
④ 当該株式の発行会社の同業他社
⑤ 当該株式を取得することにより企業価値が増大する事業会社
⑥ プライベート・エクイティファンド(非上場株式を投資対象としたファンド)
⑦ 個人投資家
などが挙げられます。
(3)発行会社側に譲渡する場合
(3-1)発行会社側に譲渡する
発行会社側は、第三者に株式を保有されるよりは発行会社側で株式を買い取った方が良いと判断することがあり得ることから、発行会社側に売却することが考えられます。
(3-2)発行会社側と価格交渉をする
譲渡制限株式の売買価格は、売手と買手との合意によって自由に決定することができますが、実務上、何らの根拠に基づかない金額では売買は成立しません。各事案の個別具体的な事情を踏まえ、最も適した評価方法を選択し、あるいは、複数の評価方法を併用することで株式の評価額を算定するため、専門的な知識が必要となります。
(3-3)価格交渉が不成立となる
発行会社側は株式を買い取るとしても、額面又はこれに類する非常識な価額でしか買い取らないのが一般であるため、価格交渉が不成立となる場合は多くあります。
(3-4)発行会社側に譲渡する
発行会社側との価格交渉が成立した場合には、合意した金額で発行会社側に株式を売却することになります。
(4)第三者に譲渡する場合
(4-1)第三者に譲渡する
発行会社側以外の第三者の中から、当該株式を正当な価格で買い取ってくれる者を探し出すことがより重要です。
最適な買手を見つけるためには、買手となり得る者の情報を最も豊富に有し、それらと取引実績に基づく関係を築いている専門家に相談することが必須です。
(4-2)第三者と価格交渉する
第三者と価格交渉をする際には、後記「(7) 売買価格決定の申立てをする」で述べる裁判所が決定する価格(実際の買い取り相場よりも大幅に高額)が、どの程度の価格になるかを正確に把握した上、可能な限り、裁判所が決定する価格に近い金額で成約するように目標価格を設定して価格交渉を行うことが必須です。
(4-3)譲渡承認請求及び買取先指定請求をする
株主が会社に対して譲渡承認請求をする際には、株主は会社が承認しない場合に備えて、会社又は会社の指定する指定買取人が当該株式を買い取ることを請求することができます。
(4-4)第三者への譲渡を承認する
会社が第三者への譲渡を承認する場合には、会社は株主の譲渡承認請求があった日から2週間以内に、譲渡承認請求者に譲渡の承認をする旨の通知をする必要があります。
(4-5)第三者に譲渡する
会社が株主の譲渡承認請求があった日から2週間以内に、譲渡承認請求者に譲渡の承認をする旨の通知した場合には、株式は当該第三者に譲渡することができます。
(5)第三者への譲渡が不承認となった場合
(5-1)第三者への譲渡を不承認とする
会社が第三者への譲渡を承認しない場合、第三者との関係においては、株式を譲渡する旨の合意がある以上、株式の譲渡は有効ですが、会社に対する関係では効力を生じないと解すべきであり、会社は譲渡人を株主として取り扱う義務があります(最判昭和63年3月15日)。
(5-2)会社による買取人の指定がある
会社が譲渡承認請求者に譲渡の承認をしない旨の通知をした上、当該株式を買い取る指定買取人を指定する場合には、期間内に譲渡承認請求者に指定買取人による買取りの通知をする必要があります。
会社が譲渡承認請求者に譲渡の承認をしない旨の通知をした上、当該株式を会社が買い取る場合には、期間内に譲渡承認請求者に会社による買取りの通知をする必要があります。
(5-3)指定買取人(ないし会社)と価格交渉をする
価格交渉が成立しなかった場合には、裁判所が決定する価格(実際の買い取り相場よりも大幅に高額)で買い取られることが保証されていることを踏まえた上で交渉する必要があります。
(5-4)価格交渉が成立する
指定買取人(ないし会社)との間で価格交渉が成立すれば、合意した金額で株式を売却します。
(5-5)指定買取人(ないし会社)に譲渡する
指定買取人(ないし会社)との間で価格交渉が成立すれば、合意した金額で、指定買取人(ないし会社)に株式を売却することになります。
(6)価格交渉が不成立となる
価格交渉が成立しない場合には、売主は指定買取人(ないし会社)から指定買取人(ないし会社)による買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して、売買価格の決定の申立てをすることができます。
(7)売買価格決定の申立てをする
売買価格の決定の申立てがなされた裁判所は、譲渡承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定します。
多くの場合、非上場会社の株主が発行会社側に買取りを打診した際の発行会社側買取金額とは比較にならないほどの高額となります。また、第三者買受人が受諾するであろう買取金額よりも遥かに高額になります。
(8)指定買取人に譲渡する
売買価格が決定すれば、決定した金額で株式を譲渡します。
各手続きの詳しい解説は、『少数非上場株式売却の専門知識』第2の2「売却手続きの流れと各手続きの解説」をご覧ください。
朝日中央綜合法律事務所への
ご相談受付はこちら