会社経営陣が、自らに有利な価額で自己サイドへ第三者割当増資をしたことに対し、少数株主側が異を唱え、経営者に対し損害賠償請求訴訟を提起し、その訴訟上の和解で少数株式を相当な価格で売却した事例

※ 弁護士の守秘義務及び、日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第四条第四号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

事例の概要

 農業用資材の製造販売会社。依頼者は発行済株式総数の約26%に当たる約3万3000株の株式を保有。現社長は依頼者の親族であるが、最近に至り、自己の支配権を強固にするため第三者割当方式で新株を発行し新株を自己に割り当てることとし、その実行のため臨時株主総会を招集した。依頼者はその招集通知を受け取り、危機感を抱き当事務所に相談。

 当事務所は株主総会開催禁止の仮処分を検討したが、時間的制約から、株主総会終了後に損害賠償請求や株式売却交渉等、取りうる法的手続きを進めることの依頼を受けた。

会社の概要

業種 地方都市に本社を置く農業用資材の製造販売会社。
規模 売上高数十億円、従業員数 数十名。
総資産   約20億円
経常利益  約5000万円
配当    1株当たり50円

株主の状況、株主構成

依頼者が約26%、その他は現社長ファミリー、機関投資家、従業員。先述の第三者割当増資の結果、依頼者の持株比率は約20%程度に低下し、現社長のファミリーは約45%程度に増加することになる。

交渉の経過と解決結果

 当事務所は、受任後まず会社に対し、先の第三者割当増資の違法性を主張するとともに、依頼者所有株式の買取をする意思の有無(有る場合、買取り価格)を打診。
 会社は、株主間の売買価格は額面価格を少し上回る程度(1株1000円まで)が限界であると回答。

 本件株式の配当還元価格は1株当たり約500円、類似業種比準価格は1株当たり約5000円、純資産価格は1株当たり約1万6000円であった。
 また、同種事案の判例には、配当還元価格を50%、類似業種比準価格を25%純資産価格を25%併用するというものがあった。当事務所の試算では、1株当たりの株価のレンジは3000円~6000円であった。

 当方は、経営陣を相手取り、先の第三者割当増資により依頼者の保有する株式価値の低下分を損害とする損害賠償請求訴訟を提起した。
 訴訟においては、第三者割当増資の前と後の株式の時価につき専門家の鑑定を申し立て、鑑定結果を得た。
 鑑定内容の骨子は、

①株式の時価は、純資産価格、収益還元価格、類似業種比準価格をそれぞれ3分の1の割合で併用する。

②第三者割当増資前は、純資産価格1株当たり約1万4000円、収益還元価格1株当たり約6300円、類似業種比準価格1株当たり約6700円(1株当たり約9000円)。

③第三者割当増資後は、純資産価格1株当たり約1万1000円、収益還元価格1株当たり約5200円、類似業種比準価格1株当たり約5400円(1株当たり約7200円)

④損害(②-③)は1株当たり約1800円

 というものであった。
 それを契機として裁判上の和解の試みを開始し、最終的には依頼者の株式全部を会社の経営陣に当初提示額の約5倍の価格(1株当たり約4500円、トータル約1億5000万円)で売却する旨の和解が成立した。

戦い終えた担当弁護士のひと言

 本件は、少数株主側が何もしなければ第三者割当増資による持株比率の希薄化、株式価格の低下を招き、泣き寝入りに等しくなる状態でした。
 当方は、会社側がとった行動の法的問題点を明らかにするとともに、各局面において最も効果的な法的手段を駆使し、裁判所の鑑定手続きや和解手続きを利用して最善の解決に至ったものです。



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