1 少数非上場株主に生じる大きな問題
非上場株式を所有しているが、自己が所有する株式が少数であり、多数派(株式の過半数を有する)である株主グループに属していないため、経営に関与できない株主(少数非上場株主)には、様々な大きな問題が生じます。大別しますと、(1)保有上の問題と(2)換価上の問題に分類されます。
(1)保有上の問題
① 相続税負担リスク
非上場株式の株主が死亡した場合、死亡株主が所有していた非上場株式は、相続税評価額(相続税法及び国税庁が定める財産評価基本通達に基づき算定される評価額)により税法上の価値が算定され、課税されることになります。
これまで配当等もなされておらず、所有していても価値の実感が湧かなかった非上場株式が、数千万円や数億円もしくはそれ以上の相続税評価額となり、思いもよらない多額の相続税が課税されることも決して珍しいことではありません。
ところが、納税のため、その非上場株式を換価しようとしても、非上場株式は、上場会社の株式と異なり、誰でも参加できる取引市場が存在しないため、具体的な買主を見つける必要があり、はたして買主が存在するのか全く不確かです。また非上場株式の多くは株式譲渡のために取締役会等の株式発行会社の承認が必要となる譲渡制限株式であることから、その換価手続は会社法の定めによる必要があるなど上場株式の売却処分と比較して遥かに複雑であり、換価の実現までに相当な時間と労力を要します。
そのため、相続税を課された相続人が、相続税の納税期限(相続開始後10か月)までに、相続した非上場株式を換価することは至難の業です。また、納税のために換価を急ぐことにより、買主からはいわば“足元を見られ”易くなり、取引価額の決定においては、相続税評価額をも大きく下回るような条件であったり、客観的に見て株式の公正な価値を大きく下回るような条件での売却になりがちです。
なお、相続税を納税期限(相続開始後10か月)までに完納することができなければ、極めて高額な延滞税率による納税を余儀なくされます(詳細は、「少数非上場株式売却の専門知識」の「第1非上場株式に関する基礎知識」で説明しますが、非上場株式の大多数を占める譲渡制限株式は、国税庁が公表する「管理処分不適財産」に該当するため、物納できない財産となっています)。
したがって、少数非上場株式を、漫然と所有し続けることは、保有株式の発行会社が、株式の相続税評価額が高額になりやすい優良会社であればあるほど、相続人において支払の目途がたたない、将来の高額な相続税を負担するリスクが高いと言えます。
② 将来の相続税負担に見合う配当も得られないこと
会社には、そもそも株主に配当を行う義務は、法律上存在しません。
会社が株主に配当をするためには、法律上、株主総会の普通決議(出席株主の議決権の過半数の賛成)が必要とされます。
言い換えますと、株主総会で配当をする旨の決議がなされない限り(=多数派株主グループが配当を不要と考える限り)、たとえ会社がどんなに好業績で配当原資となり得る剰余金を潤沢に有していたとしても、会社(経営陣)は配当をする法律上の義務はありません。
多くの非上場会社において、経営権を支配する株主は、自己が保有する株式について会社から配当を受けることを希望しません。経営権を支配する株主は、その多くが会社経営者として取締役等に就任しており、会社から役員報酬を得ることにより、会社資産を合法的に個人に移転することが可能です。
これに対し、会社が配当を出す場合、役員報酬と異なり、会社にとって法人税法上の経費に計上することができないとされているため、法人税の節税の観点からも配当をする意味が乏しく、それゆえ経営権を支配する株主は、配当の実施に消極的になるのです。
こうした事情により、非上場会社においては配当をしていないことが非常に多いため、少数非上場株主は、株式の保有を続けたとしても保有期間に何らの経済的利益をも取得していないのが多くの実態と言えます。
先述のとおり、非上場株式を保有し続ければいつかは到来する株主の相続の場面において相続税を課税されるにも関わらず、少数株主は生前にその相続税評価に見合うだけの経済的メリットを享受できないという大いなる矛盾が生じています。
このように、株式保有期間において将来の相続税負担に見合う経済的メリットを享受できないことは、少数株主が非上場株式を保有し続ける意味が乏しいと言えることの大きな理由の一つとなります。
(2)換価上の問題
非上場株式については、上場株式のように誰でも自由に参入できる取引市場がありません。
そのため、不特定多数の買主が突如現れることがなく、また、市場により自然と形成される価格相場が存在しません。
それゆえ、非上場株式の売却を目指す株主は、買主を自ら探索し、売却金額等の算定や交渉を自ら行う必要が生じます。
非上場株式の買主としては、株式発行会社に関係する買主として、当該株式発行会社やその会社の経営者、その会社の関係者、主要株主、同業他社などが考えられ、第三者の買主として、投資ファンドなどが考えられます。
少数非上場株主が売却先を検討する場合、まずは会社やその経営者を思い浮かべる人が多いようです。
しかしながら、既に経営権を支配している株主などにおいては、少数株式を、買う気がなく、又、買う気があっても話にならない不当な廉価で買い叩こうという姿勢が一般的に多く見受けられます。
したがって、非上場株式の買主として第三者の買主を探索する必要があり、この中で、投資ファンドは第三者買主として非常に有望ですが、そのためにはどのファンドがその非上場株式の買主に適しているかの、豊富な投資ファンドの情報や、そのファンドとの取引実績を持っていることが必要です。
また、非上場株式の多くは、株式譲渡のためには、取締役会等の株式発行会社の承認が必要となり、会社が承認を拒否したときは、会社法に基づく会社による買受人の指定と価格決定の手続を経て売却することになります。
このように非上場株式の換価には大きなハードルが存在し、非上場株式の換価は非常に困難と思い込んでいる非上場株式の株主が多いのです。
2 解決方法
これまで見た通り、少数非上場株式を保有し続けることにはリスクと不利益が大きい反面、売るに売れないというジレンマがあります。
これは多くの少数非上場株主の共通の悩みです。
しかしながら、詳細は「少数非上場株式売却の専門知識」で説明しておりますが、保有する非上場株式をその価値にふさわしい価格で売却する手段は、制度的に保障されているのです。
そもそも会社にはそれぞれその有する資産や収益といった実態があり、株主が有する株式には実態に応じた価値があります。
非上場会社の株式については、上場会社のように様々な経営情報が大衆に公開されていないため、その価値を把握することが一見難しく思えるかもしれませんが、「会社の実態に応じた価値」が存在することは、上場会社と同様、非上場会社であっても変わりません。
「少数非上場株式売却の専門知識」の「第2 非上場株主による売却手続きの流れ・方法・成功のポイント」で詳細に述べているとおり、第三者買主を確保し、譲渡承認請求手続を確実に履行することによって、客観的価値に相応する価格で売却できることとなります。
朝日中央グループは、これまで多くの少数非上場株式につき、その価値にふさわしい価格で売却し、クライアントの正しい利益を実現することに力を尽して参りました。
朝日中央グループは、弁護士、税理士、公認会計士といった法律面、税務面、会計面のそれぞれの分野における高度なプロフェッショナルを多数擁し、各専門家が事案に応じて最適なチームを組んで問題解決に当たっています(当グループによる過去の売却事例につきましては、「売却実績」のページをご参照ください)。
当グループが我が国では例を見ないほどの大規模でこのような高度なプロフェッショナルを多数擁し、有機的に連携して緊密かつ即時に対応できる態勢を築いている理由は、そのような態勢作りがクライアントの正しい利益を実現するために必要不可欠であるからであり、当グループの社会的使命を達成する上で当然になすべき努力であるからに他なりません。
非上場株式を有する皆様が、法的に保護されたごく当たり前の利益、正義を実現するために、当グループはクライアントの皆様のために最大限の力を発揮することをお約束致します。
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