未上場株式かつ少数株式のファンドへの売却が成功した事例

※ 弁護士の守秘義務及び、日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第四条第四号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

事例の概要

 創業者の三男及びその子らが、会社の役員及び従業員として会社の業務に従事していたものの、経営陣(創業者の長男の家族)の経営方針等に疑問を抱き、会社から離れることを決意し、持ち株の換価を希望して当事務所に依頼を行った。

会社の概要

業種製造業
規模資本金   約3億円
純資産   約500億円
売上高   約600億円
当期純利益 約20億円
配当金   1株10円

株主の状況、株主構成

 依頼者が10%超(一部は議決権制限株式)、社長及び副社長(創業者の長男の子ら)が50%超、その他の株を創業者の他の親族が保有している同族会社。

交渉の経過と解決結果

(1) 当事務所における株価試算では、DCF法に基づく株価1株約1万円、純資産価額方式に基づく株価1株約8000円、配当還元方式に基づく株価1株約100円とし、各算定方式の併用割合についてDCF法:純資産価額方式:配当還元方式を1:1:2とした金額(約4500円)をベースに、1株3000円から6000円を妥当な株価レンジと判断していた。

(2) 受任後、まず経営陣と面談を行い、会社又は社長による買取を打診したところ、相続税評価額(類似業種比準価額)である1株約2000円(売却対象株式全体で約10億円)であれば会社で買い取ることができる、ただし1株2000円という数字は、前期の決算に基づく数字であり、今期は経営が悪化しており、実際の買取金額はもっと小さくなるとの回答であった。

(3) 会社側の提示額は、妥当な株価レンジに及ばなかったため、第三者への売却を模索することにし、まず、会社に対し、会計帳簿閲覧謄写請求を行い、決算書その他の会計帳簿の開示を受けた。
 なお、会社側からは、決算書等の開示と共に、当該期の決算が終わり、同決算の数値に基づく類似業種比準価額は1株約1700円となり、同金額が最終的な買取可能額となるとの提案があったが、当方は、会社への売却はせず、第三者に売却するため、譲渡承認請求に際しては協力していただきたい旨を会社側に通知した。

(4) その後、対象会社の取引先メーカー、金融機関、外国会社等の複数の買い手候補に買取りを打診したところ、セカンダリー投資等を行うファンドが最も強い関心を示したため、同ファンドとの間で価格交渉を行い、最終的に、会社側が提示した金額の倍額以上である1株約4000円(売却対象株式全体で約20億円)の提示を受けることができた。
 なお、同ファンドの株価算定根拠は、上場している類似企業の株価を参考に、PER、PBR、EV/EBITDAといった評価指標に倍率をかけるマルチプル方式に基づき算出される株価に、非流動性ディスカウント、マイノリティディスカウントを加味したものであった。
 DCF法や純資産価額方式による株価よりは低い金額であったが、当事務所で試算していた妥当な株価レンジに収まっていること、議決権制限株式を含めて一律の株価で買い取ってもらうこと、会社提示額の倍額以上であることなどに鑑み、同ファンドに対し株式を売却することとなった。

(5) 同ファンドの要望として、正式な売買契約締結前に、経営陣と面談し、今後の事業計画等のヒアリングを行いたいとの申し入れがあったため、基本合意書を締結した上で、会社に対して譲渡承認請求を行うと同時に、同ファンドの紹介文及び挨拶文を会社宛に送付し、同ファンドが経営陣とコンタクトしやすい状況を作出した。
 会社との間の交渉を断念する際に、会社に対し、第三者への売却の予告をしていたこともあり、会社側は、当方の譲渡承認請求に対し速やかに承認し、同ファンドとの面談及び追加資料の提供等に積極的に応じたため、上記の株価での正式な売買契約の締結及び決済を無事終えることができた。

戦い終えた担当弁護士のひと言

 この種の事案では、最も適切な第三者の買い手の選考がほぼ全てといって過言ではありません。
 当事務所の幅広いネットワークにより多数の買い手候補との間で交渉を行えたこと、弁護士、公認会計士、税理士が一体のチームとなって買い手候補との価格交渉に臨み、適切な買取金額の提示を引き出したことが事件解決を決定づけました。



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