相続により取得した株式を約400億円で会社側に売却した事例

※ 弁護士の守秘義務及び、日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」第四条第四号にしたがい、掲載にあたり依頼者が特定できないよう、また依頼者の利益を損うおそれがないよう実際の事例を一部加工しております。
   

事例の概要

 会社の経営者であった依頼者の夫が亡くなり、依頼者は夫が保有していた株式を承継した。
 依頼者は会社の経営に参画したことはないため、承継した株式の会社による買取を希望したが、対象株式の相続税評価額が250億円であり、当事務所の対象株式の時価算定では600億円であるのに対し、会社がオファーする買取額は50億円であった。
 そのため、当事務所は、買受候補者の選定を行い、著名ファンドを買受人として、対象会社に対し、譲渡承認請求及び承認しない場合には買受人を指定すべきことの請求を行ったが、対象会社は右譲渡を承認せず、グループ会社を買受人に指定したため、裁判所で売買価格を決定することになった。

会社の概要

業種製造業、販売業、不動産賃貸業を営んでいる。
規模年商  2000億円以上
純資産 2000億円以上
利益  50億円以上
配当  1株あたり5円以上

上場会社に匹敵する規模の会社である。

株主の状況、株主構成

依頼者は、会社の約30%の株式を保有している。
夫の親族側も併せて約30%の株式を保有している。

交渉の経過と解決結果

(1) 指定買取人からの買取提示額は50億円であったが、当方は、本件売買は支配権の移動を伴う売買であり、支配権の移動を伴う株式の売買における妥当な算定方式である再調達時価純資産方式による評価1株あたり約70万円及び収益還元方式による評価1株あたり約60万円を、7:3あるいは3:1の併用割合により算定した評価額が約600億円であり、少なくとも相続税評価額を上回る400億~600億円が妥当な価格レンジと考えていたため、交渉は不成立となった。

 よって、依頼者は、会社法144条2項に基づき売買価格決定の商事非訟の裁判を申し立てた。株式売買価格決定の商事非訟裁判手続においては、対象会社の資産評価として、対象会社が所有する膨大な不動産の時価評価や対象会社の所有する多数の子会社の株式の評価が必要であり、多数の任意鑑定書を作成、提出した。
これら個別の資産評価も大きな争点であったが、本件における最大の争点は、対象株式を評価すべき評価方法及び各評価方法の併用割合であった。

 会社側は、①売主側、買主側いずれの立場からみても、本件株式は少数株式である、②売主以外の株主は、いずれも会社側と共通の立場で議決権行使を行う立場にあるから、本件売買によって経営権の移動が伴うものではない、などの理由から、少数株式の評価方法である配当還元方式を基本的な評価方法として採用すべきであると主張し、本件株式の評価は50億円であると主張した。
 これに対し当方は、本件売買によって、夫の親族側は完全な支配権を取得することになるから、支配株式として評価すべきであり、評価額は600億円を下らないと主張した。

(2) その後、裁判所による株価の公的鑑定が行われることになり、売主側の価格としては支配株式として評価し、買主側の価格としては、支配株式と少数株式の中間の株式として評価すべきであるとし、本件株式の評価額を約400億円であるとした。

(3) その結果、依頼者は、親族側が裁判所で主張していた額の約8倍の価格で売却することができた。

戦い終えた担当弁護士のひと言

 本件では、依頼者側と相手側に対象非上場株式の評価に大きな開きがありました(依頼者400億~600億円、相手方50億円)。

 相手方は、その主張を裏付ける有名監査法人の鑑定書や多数の著名学者の意見書を提出し、会社の総力を挙げてその評価の正当性を立証しました。これに対し当方は、これを上回る膨大な有名監査法人の鑑定書や多数の著名学者の意見書を提出し、戦いは我が国の有名監査法人と著名学者を総動員する空前のものとなりました。

 相手方を上回る膨大な鑑定書や意見書を提出した運動量が、依頼者の評価に近い公的鑑定結果に結びつきました。もし運動量において相手方に負けておれば、公的鑑定結果は依頼者に不利なものになった可能性は否定できません。

 この案件のような事案では、膨大な運動量で対応できる態勢をとることが不可欠であり、膨大な運動量で対応できる態勢をとったことが勝因です。



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