会社側の買取価格が低額であったため、第三者のファンドに株式を売却する方針に変更し、会社側の提示価格の約2倍の価額で株式を当該ファンドに売却した事案

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事例の概要

 戦後まもなく数人で創業した自動車部品メーカー。現在の経営陣は、相談者と親族関係にないファミリー。相談者は複数であり、全員で発行済み株式総数の約30パーセントに当たる約17万株を保有。

 相談者のうち1名は、当事務所に相談する直前まで会社の取締役であったが、定年後は経営に参画する見込みがないため、親族を含めて保有株を売却したいと考えるに至った。
相談者は株価についての知見がなく、どのように売却交渉をすべきかについても見当がつかず、当事務所に株式売却交渉を依頼した。

会社の概要

業種 地方都市に本社を持ち、別に国内工場を持つ自動車部品メーカー
規模 総資産  約120億円
売上高  約150億円
経常利益 約70億円
配当   1株当たり25円

会社は業績を伸ばしている状況。

株主の状況、株主構成

 相談者ファミリーとそれに同調するファミリーに属する者が合計で約30パーセントの株式(約17万株)を保有。現在の代表取締役のファミリーとその追従者で残りの株式を保有。
 現在の代表取締役のファミリーは株式の過半数を保有している。

交渉の経過と解決結果

 相談者らは合計17万株について足並みをそろえており、当事務所は全員から株式売却を受任。
 受任後直ちに、当事務所は依頼者を代理して本社を訪問して直接社長ほか首脳に面会し、受任の趣旨を伝えたうえ、株価算定に必要な資料一式(法人税申告書、勘定内訳書、固定資産明細書、有価証券明細書、子会社の決算書等)の提出を求めた。
 その月に会社側は資料一式を送付してきたので、これに基づき当事務所は依頼者に、株式の各算定方式による価格と、評価額のレンジを示した。
 具体的には、配当還元価格は1株当たり約200円、純資産価格は1株当たり約5000円、収益還元価格は1株当たり約5000円、類似業種比準価格は1株当たり約6000円であった。
 また、同種事案の判例には、配当還元価格を40%、純資産価格を30%、収益還元価格を30%併用するというものがあった。当事務所の試算では、1株当たりの株価のレンジは1500円~3500円であった。

 翌月、当事務所は再度本社を訪問し、1株約4000円強(17万株で約7億円)を提示した。これに対し会社側は、上限価格を予め1株1000円と頑なに決めていたと思われ、1株1000円を超える価格交渉には一切応じなかった。
 そのため当事務所は、第三者の買い手を探すこととし、検討の末A社(ファンド)を依頼者に紹介しA社へ株式を売却する方針に切り替えた。当事務所は会社に対し、当該株式をA社に売り渡す旨を通知しその承認を求めたところ、会社は「承認する」と回答した。

 そこで当事務所はA社との価格交渉を本格化させた。A社は当初、買取価格として1株1200円程度(約2億円)をオファーしたが、そのあと約3か月間、当事務所は会社側に経営情報や追加資料の提供を求め、その資料をA社に示すなどして買取り価格の引き上げのための交渉を行った。
その結果、A社は1株2000円強(約3億5000万円)で買い取る旨を提示し、依頼者もそれで合意するに至った。

戦い終えた担当弁護士のひと言

 本件は、会社側の買取価格が低額で会社側に株式を売却することができず、なおかつ会社側が第三者への株式売却を承認しており、会社法第144条に基づく株式譲渡不承認に伴う買取請求および価格決定申立(商事非訟)ができないケースにおいて、依頼者のために最も有利な第三者買受人(ファンド)を選定し、そのファンドとの価格交渉に集中して成功した事案です。
 このような事案では、第三者買受人の選定で勝負の大半が決するといっても過言ではありません。



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