非上場株式であることによる主な問題点としては、(1)売却が困難であること、(2)相続によって取得した場合に相続税の納税リスクがあることが挙げられます。
(1)売却が困難であることについて
非上場株式の売却が困難とされる主な原因には、以下で詳述するように、ア 公開マーケットが存在していないこと、イ 会社の譲渡承認を得る必要があるため、買主が諦めてしまうこと、ウ 譲渡制限株式であることに加え、少数株式の場合には、株式を取得する利点が少ないと考える買主が多いことが挙げられます。
譲渡制限株式には流通市場が存在しないため、会社に関する情報も開示されていないことに加え、そもそも株式の売却を検討している株主が存在していることも第三者には気が付いてもらえません。そのため、株主は自ら会社に関する情報を集めた上、買主を探す必要があります。
また、取引相場が存在しないため、株式をどのように評価するのかについても難しい問題があります。
譲渡制限株式は、売主と買主との間で売買契約が成立したとしても、会社の譲渡承認が得られなければ、会社との関係においては、買主は株主として扱われません。そのため、仮に株式の取得に興味を示す買主が現れたとしても、会社の譲渡承認が得られない可能性が高いと判断されてしまった場合には、売買契約を締結するには至らないことがあります。
前述したように、少数株主にも意外と多くの権利が認められています。
しかし、会社経営への影響力という点においては、議決権をどれだけ持っているかによって決せられることから、買主としては、少数株式を取得したとしても会社経営に参画できる余地は少ないこととなります。
また、少数株主が生まれる主な原因の1つとして相続が挙げられますが、相続が発生する度に株式は細分化され、会社経営への影響力は限定的なものとなります。
なお、非上場株式に限った話ではありませんが、相続財産に株式が存在する場合、相続開始後から遺産分割協議が成立するまでの間は、当該株式は相続人間で準共有(数人が株式を共同で保有することをいいます。)の状態となります。上記のように、株式が2以上の者の共有に属するときは、株式の共有者は、当該株式についての権利行使者を一人定めて会社に通知しなければ、当該株式についての権利を行使できないという問題もあります(会社法106条本文)。
(2)相続によって取得した場合に相続税の納税リスクがあることについて
相続税とは、人の死亡によって財産が移転する機会に、相続又は遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した財産に対して課される租税であり、当然、非上場株式を相続等によって取得した場合にも相続税の課税対象となります。
相続税は現金で納税することが原則ですが、相続税を延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税義務者の申請に基づき、税務署長の許可を得ることにより、納付を困難とする金額を限度として、金銭以外の財産で納付する「物納」が認められています。しかし、前述したように、譲渡制限株式は売却が困難であることから、譲渡制限株式は物納不適格財産とされており、譲渡制限株式をもって相続税を納税することはできません。
したがって、相続した非上場株式の相続税評価額が高額であることにより、高額の相続税を納税しなければならない場合、物納することもできず、非上場株式を売却して納税資金を作ることもできず、相続税を納税することができない事態となります。
なお、相続開始後に、非上場株式を相続することによる高額の相続税を納税しなければならない事態を回避する方策としては、相続放棄(相続人が遺産の相続を全面的に放棄することです。)や限定承認(相続した財産の範囲内で被相続人の債務を弁済し、余りがあれば相続できるという制度です。)を行うことが考えられますが、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があるのに対し、相続放棄や限定承認は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から3か月以内に必要書類を揃えて家庭裁判所に申述しなければなりません(民法915条1項)。
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