(1) 株式の権利内容、株主構成等を確認する手段
非上場株式の売却を検討するにあたっては、そもそも自分が株式を何株保有しているのか、株主構成はどのようになっているのか、保有している株式には譲渡制限が付されているのか、株券が発行されているのかを再確認する必要があるところ、株式の権利内容、株主構成等を確認する手段としては、ア 定款閲覧請求権と、イ 株主名簿閲覧請求権が存在します。
定款は、会社の組織と運営に関する事項を定める根本規則であり、会社は定款により会社の組織や、会社と株主との間又は株主相互間の法律関係を定めることができ、株式に譲渡制限を設ける際にも定款にその旨の記載がなされます。そのため、会社の定款を確認することが重要であることは言うまでもありません。
既存株主は有力な買手候補となり得ることから、買主としては、自身が将来的に株式を売却して投下資本を回収することができるか否かを検討するためにも、株主名簿閲覧請求をすることにより、会社の株主構成に関する情報の開示を求めることがあります。
(2) 株式の価値を確認する手段
株式の価値を確認しなければ、株式を売却すべきか、売却できる見込みがあるか、売却時期は適切か等を適切に判断することはできないところ、株式の価値を確認する手段には、ア 計算書類閲覧請求権と、イ 会計帳簿閲覧請求権が存在します。したがって、株式の売却を検討するにあたってこれらの権利の行使は非常に重要です。
計算書類閲覧請求権は、株式を1株でも保有していれば、定款の定めあるいは株主総会の決議をもってしても奪うことができない権利であることも前述したとおりです。
また、会計帳簿閲覧請求権が行使されると、会社業務の円滑な執行を阻害する危険や、企業秘密が漏洩する危険があることから、一定の拒絶事由に該当する場合には、会社は株主からの閲覧請求を拒むことができるとされていることも前述したとおりです。
(3) 会社の決議内容を確認する手段
株主総会や取締役会は、会社の事業の業績、財務状況、対処すべき課題、関連会社の情報、従業員の情報、株主構成、役員に関する情報等の会社に関する重要な情報を集めることができる重要な機会であるところ、それらの会社の決議内容を確認する手段には、ア 株主総会議事録閲覧請求権と、イ 取締役会議事録閲覧請求権が存在します。したがって、株式の売却を検討するにあたって、これらの権利の存在を視野に入れておくことはとても重要です。
また、株主が、株主総会議事録の閲覧請求権を行使するに際しては、株主としての地位に基づく正当な理由によることが必要であり、株主総会議事録の閲覧請求権の行使が不当な場合には、会社は閲覧請求を拒むことができることも前述したとおりです。
もっとも、監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社の株主は、裁判所の許可を得てはじめて、議事録等の閲覧等の請求をすることができます(会社法371条3項)。
(4) 株券が手元にない場合の手段
前述したように、株券発行会社において株式を譲渡する場合には、譲渡人と譲受人との間で株式譲渡の合意をすることに加え、株券を交付しなければ譲渡の効力は生じません(会社法128条1項)が、非公開会社の場合には、株主の請求がない限り、株券を発行しないことができるとされています(会社法215条4項)。
そのため、株券発行会社の非上場株式保有者が株式を売却するにあたっては、株主は会社に対して、株券の発行を請求する必要があります。
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