第3 反対株主による買取請求の流れ・方法・成功のポイント
1 反対株主による買取請求のあらまし
(1) 反対株主による買取請求権とは
(2) 買取請求を行うことができる場合
2 買取請求の流れと各手続の解説
3 株価算定方法
(3) 株価算定規範
4 判例
(1) 株価算定に関する判例
(2) 要件に関する判例
5 成功のポイント
6 書式集とその説明
(1) 各種通知書及び請求書
(2) 買取合意時の合意書
1 反対株主による買取請求のあらまし
(1)反対株主による買取請求権とは
反対株主の株式買取請求権とは、会社の一定の行為(後記「(2)買取請求を行うことができる場合」で説明しています)に反対する株主が、会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できる権利です。
非上場株式は上場株式のように誰でも自由に参入できる取引市場がないため、売却するためには自ら買主を選定する必要があります。
しかしながら、反対株主による買取請求権は、“売却の相手方(=会社)”及び“売却価格(=公正な価格)”とも、法律で定められているため、株主は非上場株式を公正な価格で確実に売却することができるのです。
また、会社に対しこの株式の買取請求権を行使するか否かは、専ら株主の判断に委ねられるため、この反対株主の買取請求権は、会社の一定の行為に起因して発生する機会に限定された場面でのみ行使できる権利とは言え、少数非上場株主にとって、自己の主体的判断により株式を売却することが保証された、極めて強力な権利です。
② 売却価格は公正な価格となる
(2)買取請求を行うことができる場合
① 一定の定款変更
発行する全部の株式を譲渡制限株式とする定款変更、種類株式発行会社において、ある種類株式を譲渡制限株式または全部取得条項付株式とする定款変更(以下これらを合わせて「一定の定款変更」といいます)を行う場合(会社法116条1項1号、2号)
② 一定の資本再構成行為のうち、定款により種類株主総会決議が不要とされているが、種類株主に損害を及ぼすおそれがある行為
株式の併合又は株式の分割、株式の無償割当て、単元株式数についての定款変更、株主割当による株式の募集、株主割当による新株予約権の募集、新株予約権の無償割当てについて、定款により種類株主総会の決議が不要とされているが、種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合(会社法116条1項3号)
③ 株式併合
株式併合により、一株に満たない端数が生じる場合(会社法182条の4第1項)
④ 事業譲渡
事業全部の譲渡、事業の重要な一部の譲渡、他の会社の事業全部の譲受け、事業の全部の賃貸・事業の全部の経営の委任・他人と事業上の損益の全部を共通にする契約及びこれらに準ずる契約の締結・変更・解約等(以下これらをあわせて「事業譲渡等」といいます)を行う場合(会社法469条1項)