非上場少数株主にも会社法により認められた、株主として行使できる権利があります。本トピックスでは、非上場少数株主が、株式保有割合等に応じて行使できる権利について説明します。
1.1株でも保有していれば行使できる権利(単独株主権)
(1)定款閲覧・謄本交付請求権(会社法31条2項)
(2)株主名簿閲覧謄写請求権(会社法125条2項)
(3)株主総会議事録閲覧謄写請求権(会社法318条4項)
(4)取締役会議事録閲覧謄写請求権(会社法371条2項)
(5)計算書類閲覧・謄本交付請求権(会社法442条3項)
(6)吸収合併契約等の組織再編に関する書面の閲覧・謄本交付請求権(会社法782条など)
(7)募集株式発行差止請求権(会社法210条)
(8)自己株式の処分差止請求権(会社法210条)
(9)新株予約券発行差止請求権(会社法247条)
(10)取締役会招集請求権(会社法367条)
(11)取締役の違法行為差止請求権(会社法360条)
(12)執行役の違法行為差止請求権(会社法422条)
(13)略式組織再編行為の差止請求権(会社法796条など)
(14)株主総会における議題提案権(取締役会非設置会社の場合)(会社法303条)
(15)株主総会における議案提出権(会社法304条)
(16)株主総会における議案通知請求権(取締役会非設置会社の場合)(会社法305条)
(17)吸収合併契約等の組織再編に関する無効確認の訴えを提起すること(会社法828条)
(18)株主総会決議不存在確認の訴えを提起すること(会社法830条1項)
(19)株主総会決議無効確認の訴えを提起すること(会社法830条2項)
(20)株主総会決議取消の訴えを提起すること(会社法831条)
(21)株主代表訴訟を提起すること(会社法847条)
(22)特別清算の開始を申し立てること(会社法511条)
(23)反対株主の株式買取請求権(上記の共益権と異なり、自益権として分類されます)(会社法116条など)
(24)株式価格の決定申立をすること(上記の共益権と異なり、自益権として分類されます)(会社法117条など)
2.株式保有割合に応じて行使できる権利(少数株主権)
(1)議決権の1%または議決権の300個
ア 株主総会における議題提案権(取締役会設置会社の場合)(会社法303条)
イ 株主総会における議案通知請求権(取締役会設置会社の場合)(会社法305条)
(2)議決権の1%
ア 株主総会招集手続調査、決議方法調査の検査役選任請求権(会社法306条)
(3)議決権の3%または発行済株式の3%
ア 業務調査、財産調査の検査役選任請求権(会社法358条)
イ 会計帳簿、資料の閲覧謄写請求権(会社法433条)
ウ 清算人の解任請求権(会社法479条)
エ 役員(取締役、会計参与、監査役)の解任請求権(会社法854条)
(4)議決権の3%
ア 株主総会招集請求権(会社法297条)
イ 取締役会決議による役員等の責任免除の阻止権(会社法426条7項)
(5)議決権の10%または発行済株式の10%
ア 会社解散の訴えを提起すること(会社法833条)
3.(参考)多数派株主が、株式保有割合に応じて決定できること
参考として、多数派株主(株式の過半数を有する株主グループ)が、株主総会決議により決定できることについて、主要なものを説明します。
(1) 株主総会普通決議(会社法309条1項)
(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成が必要)
取締役・監査役の選任、取締役・監査役の報酬額決定、取締役の解任、剰余金の配当、利益相反取引の承認、計算書類の承認
(2) 株主総会特別決議(会社法309条2項)
(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要)
監査役の解任、譲渡制限株式の取得、特定の株主からの自己株式の取得、定款の変更、事業譲渡、合併契約等の承認、会社解散、相続人に対する株式売渡請求
(3)株主総会特殊決議(会社法309条3項)
(議決権を行使できる株主の半数(頭数)以上が株主総会に出席し、株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要)
発行する全株式を譲渡制限株式とする定款の変更
(4)株主総会特殊決議(会社法309条4項)
(総株主の半数(頭数)以上が株主総会に出席し、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要)
剰余金の配当や、残余財産の分配、議決権について株主ごとに異なる取扱いを定める定款の変更
本トピックスでは、非上場少数株主が、株式保有割合等に応じて行使できる権利について説明しました。
少数非上場株主としては、会社の状況に応じて、適切に、会社に対して権利行使をしていくことが重要となります。