遺産の中に中小企業などの非上場株式が含まれている場合、相続するメリットがあるのか、デメリットはどのようなものがあるのか、また、そもそも上場株式と同じように相続できるのか悩む方も多いのではないでしょうか。他方で、非上場会社の経営者や非上場株式を保有されている方の中には、自分が死んだら株式はどうなるのか気になる方も多いでしょう。
この記事では、非上場株式は相続できるのかを解説するとともに、相続するメリットや注意点、さらには相続以外の方法で不要な非上場株式を処分する方法もご紹介します。
1 非上場株式は相続できる?
非上場株式も相続することが可能です。相続とは、被相続人(亡くなった方)の財産に属した一切の権利義務が、一定の身分関係にある相続人に引き継がれることです(民法896条本文)。ただし、被相続人の一身に専属したものは相続されません(同条但し書き)。一身に専属した権利義務とは、特定の個人のみに属し、その性質上、他の人には移転しない権利義務のことをいいます。たとえば、労働者としての地位や国家資格、親権、親族としての扶養請求権・扶養義務などが該当します。
株式は本来的に他者への移転が想定された権利のため、一身に専属した権利義務には該当しません。そのため、上場・非上場を問わず、預貯金などと同様に相続できます。
なお、譲渡制限株式を譲渡するには当該会社の承認を得る必要がありますが、相続は「譲渡」ではなく「承継」のため、譲渡制限株式であっても被相続人が亡くなって相続する場合は会社の承認は不要になります。
ただし、会社によっては、定款で「株式が相続されることになった場合には当該会社が相続人に対して売渡請求できる」旨の定めがなされていることがあり(会社法174条)、この定款の定めに従って当該会社が株式を買い取ることになった場合には、株式を相続できないことになります。
2 非上場株式を相続するメリット
非上場株式を相続した人が得られるメリットは、以下の3点です。
2.1 当該会社の経営に参画できる
株式を相続した場合、当該会社の株主としての権利行使が可能になりますので、株主総会に出席し、議決権を行使できることになります(会社法105条1項3号)。また、相続した株式が当該会社の一定割合(原則3%)以上のものである場合には、当該会社に対して会計帳簿等の閲覧等を請求することが可能です(会社法433条)。
これらの株主としての権利行使を行うことで、当該会社の経営に参画することが可能になります。ただし、相続した株式がもともと議決権制限のなされている種類株式である場合には、当然ながら議決権行使はできません。
2.2 配当金を受け取れる場合がある
株主の権利の一つとして、剰余金の配当を受ける権利があります(会社法105条1項1号)。非上場株式のままでも会社が配当金を出す場合には、相続で株式を取得した株主も配当金を受け取ることができます。この場合、相続人にはインカムゲイン(資産の保有によって得られる利益)で少しずつでも経済的なメリットがもたらされるといえるでしょう。
2.3 当該株式を売却して換価することができる
株式は、原則として譲渡可能です(会社法127条)。非上場株式で譲渡制限のない株式であれば、当該株式を相続した後に第三者に自由に売却することができます。
また、当該株式が譲渡制限株式であったとしても、売却は可能です。当該会社に対して、第三者に譲渡することを承認するように請求し、会社が承認した場合、もしくは一定期間内に何ら回答しなかった場合には承認したものとみなされ、第三者に譲渡することが可能です(会社法136条、145条)。
会社が譲渡を承認しない場合には、当該会社ないしは指定買取人が買取らなければなりません(会社法140条)。
したがって、譲渡制限株式を相続した場合、会社が譲渡承認した場合には第三者へ、省都承認されなかった場合には、当該会社ないしは指定買取人へと、いずれの場合でも当該株式を売却することが可能です。
3 非上場株式を相続する際の注意点
非上場株式の相続により得られるメリットがある一方で、デメリットもあります。
特に、以下の4点には注意しましょう。
3.1 多額の相続税を課される場合がある
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税が課せられます。そのため、相続した非上場株式の評価額や株式数によっては、多額の相続税を課せられる可能性があります。
相続税の計算には、相続する遺産の額に応じて税率が変わる「累進課税制度」が採用されており、税率は最大で55%です。被相続人が非上場株式の他にも大きな資産を有していた場合や、自社株の全部または大部分を保有していた中小企業の経営者が亡くなった場合などは相続税の負担が大きくなるため注意が必要です。
非上場株式と相続税の問題については、以下の記事でも詳しく解説しています。
3.2 議決権割合によっては経営参加が難しい
前述のとおり、株式を相続した場合には、株主として株主総会に出席し、議決権を行使するなどして、当該会社の経営に参加することができます。ただ、株主総会での決議は保有している株式数によって議決権の数が決まりますので(会社法308条)、相続した株式の議決権割合が低い場合には、自身の意思が必ずしも反映されるとは限りません。例えば、相続した株式の議決権割合が全体の5%に過ぎず、他に70%の株式を保有する株主が一人いる場合、事実上はその70%を保有する株主一人の意思によって株主総会決議がなされ、結果として会社運営に参加できないというケースもあります。
特に非上場株式では、親族や知人らの少人数で株式を保有していることも多く、議決権割合の低い株式を相続しても、事実上経営に参加できないというケースが起こりえます。
非上場株式を相続する場合には、当該会社の他の株主構成や議決権割合なども調査したうえで相続するかどうかを判断したほうが良いでしょう。
3.3 配当金がないこともある
株主の権利として、剰余金の配当を受ける権利がありますが、配当金は必ず得られるものではありません。当該会社の経営状況に左右されますし、仮に利益があったとしても株主総会で決議されなければ配当されません。
なお、株主は有限責任ですので、当該会社が損失を出していても株主に補填を求められることはまずありません。
配当金を見込んで株式を相続する場合には、当該会社の事業活動の内容や経営状況など、できる限りの調査を行ったうえで相続するかどうかを判断したほうが良いでしょう。
3.4 株式の評価方法が複雑である
上記の相続税を課されるリスクとも関連しますが、非上場株式についてはその価格の評価が複雑であることにも注意が必要です。相続した非上場株式を手放したい場合、どれくらいの価格で売却できるのかが直ちに判断しにくいです。非上場株式には市場価格が存在せず、会社に関する情報も開示されていないことから、第三者から見て株式の価値を適正に判断するのが難しいのです。
非上場株式の評価方法は様々ありますが、「インカム・アプローチ(収益方式)」、「マーケット・アプローチ(比準方式)」、「ネットアセット・アプローチ(純資産方式)」の3つに分類されて、さらに複数の評価方法に分かれます。非上場株式の評価は、こられ評価方法のひとつを選択、あるいはこれらの評価方法を併用して評価します。どのような場合にどのような選択や併用をするかは、過去の判例によって定立された規範によります。
相続する非上場株式の価格によって相続するかどうかを決めたいというような場合には、弁護士などの専門家にご相談ください。
4 非上場株式の相続で必要な手続き
ここでは、非上場株式を相続するために必要な手続きをご紹介します。
4.1 株式評価額の算定
まずは、被相続人が保有していた非上場株式の評価額を適正に算定する必要があります。他の相続人との遺産の公平性において、株式評価額の算定は欠かせません。
ここでは、第三者に売却する場合などに参考となる評価額の算定方法について説明します。
「インカム・アプローチ(収益方式)」…代表的な手法はDCF法で、企業が将来生み出すと予想される収益に基づいて企業価値を評価する方法。
「マーケット・アプローチ(比準方式)」…類似の企業や取引事例と比較することで、企業価値を算出方法する方法。
「ネットアセット・アプローチ(純資産方式)」…企業の純資産に基づいて、企業価値を評価する方法。
相続税評価における非上場株式の評価については、国税庁で定めた評価方法があるため、そちらについては、後ほど説明します。
4.2 遺産分割協議で取得者を決定
次に、遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するのかを決めます。この協議において、非上場株式の取得者も決めることになります。遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効となることにも注意が必要です。協議後は遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印したうえで、印鑑証明書も添付します。
なお、遺言書で非上場株式の取得者が指定されている場合は、基本的には指定された人が相続することになります。ただし、遺言書があっても相続人全員が合意すれば、指定された内容とは別の方法で遺産を分けることも可能です。
4.3 株主名簿の書き換え
非上場株式を相続する人が決まったら、株主名簿を書き換える必要があります。名義書換の手続きは会社によって異なりますが、一般的には以下のような書類を株式発行会社へ提出して書き換えの請求を行います。
・株式名義書換請求書
・株券(発行されている場合)
・相続関係を明らかにする戸籍謄本類
・相続人の住民票
・遺産分割協議書または遺言書
上記の他にも書類が必要となるケースがあるため、詳しくは株式を発行した会社に問い合わせましょう。
4.4 相続税の申告・納付
相続税がかかる場合は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。
前提として、株式評価額の算定と遺産分割協議を速やかに行っておかなければなりません。遺産分割協議が未了でも、法定相続分どおりに相続したものとして相続税の申告・納付が可能ですが、株式評価額の算定が未了の場合は相続税の申告が正しくできないことに注意が必要です。
株式評価額の算定をスムーズに行うためには、弁護士や公認会計士、税理士などの専門家へ早めに相談したほうがよいでしょう。
5 相続税申告のための非上場株式の評価方法
相続税申告のための非上場株式の評価方法は、上記で記載した株式の評価方法とは異なります。
5.1(1)原則的評価方式
相続税評価では、評価する株式の当該会社の総資産価額、従業員数および取引金額により大会社、中会社または小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価することとされています。
類似業種比準方式とは、類似業種の会社(一般的には上場企業)の株価などと比較して株価を算定する方法です。
純資産価額方式とは、貸借対照表の資産・負債の額をもとに算出される純資産額を基準として価格算定する方式です。
・小会社:大会社と小会社の評価方法を併用して評価する
5.2(2)特例的な評価方式
配当還元方式とは、株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
5.3(3)特定の評価会社の株式の評価
以下のような特定の評価会社の株式は、原則として、①から⑤については純資産価額方式、⑥については清算分配見込額により評価することとされています。
なお、①から④の当該会社の株式を取得した同族株主以外の株主については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価することとされています。
6 非上場株式を相続したくない場合の方法
非上場株式の相続にはデメリットもあるため、相続したくないと考える方もおられます。相続したくない場合は、「遺産分割協議により他の相続人に相続させる」「相続人が相続放棄をする」という2つの方法が考えられます。
ここでは、非上場株式を相続したくない場合の対処法について紹介します。
6.1 遺産分割協議により他の相続人に相続させる
相続人が複数いる場合、被相続人の遺言がなければ、どの相続人がどの遺産を相続するかということを、相続人間で協議して決めることができます。遺産に含まれる非上場株式を相続したくない場合、相続人間の遺産分割協議において、他の相続人が当該株式を相続し、本人は預貯金などの他の遺産を相続するということを協議によって決めることができます。
なお、遺産分割協議を行う場合、一般論としては、遺産をリストアップしたうえで、各遺産の評価額を算定して遺産総額を算出し、その遺産総額に各相続人の法定相続分を乗じた金額をベースにして協議を行っていくことになります。遺産の中に非上場株式がある場合には、遺産総額を算出する過程において、非上場株式の評価額を求めなければならなくなることが多いです。
6.2 相続放棄
非上場株式の保有者が生前に売却しないまま亡くなった場合は、相続放棄をすることも可能です。相続放棄によって相続人にならなかったものとみなされるため、不要な株式を引き継ぐことはありません。
相続放棄をするためには、相続開始から3ヵ月以内に、家庭裁判所で申述の手続きを行う必要があります。また、相続放棄をすると被相続人の遺産を一切受け取ることができません。そのため、あくまでも相続放棄は最終手段として検討しましょう。
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